
人間の体は誰でも年齢とともに細胞の代謝が落ちてしまい、白髪の1本や2本はできます。多くの場合は30代から白髪が発生しはじめるため、この年齢を超えているなら特別異常ではありません。しかし、これより若いのに白髪が多い方や、30代で量が多いと病気が原因でなっているのではないかと心配してしまうでしょう。白髪の原因と、それ以外の原因で起こる病気の違いについて解説します。
病気ではない白髪の原因とは
白髪は遺伝による影響を受けやすいと考えられています。メラニン色素が髪に送りにくい体質が遺伝すれば、その子どもも似たような白髪の状態になるといえます。しかし、遺伝は白髪の原因のひとつに過ぎず、生活習慣や食生活などでも状況は変化します。
白髪が年齢的に影響が受けやすいのは、活性酸素を除去する抗酸化物質が不足したり、成長ホルモンの分泌量が低下したりするためです。人は毎日酸素を取り入れており、その一部が活性酸素になり、そのうちのひとつが過酸化水素に変化します。過酸化水素ができても酵素の力で分解することができるのですが、体内の酵素量は年齢とともに低下しやすく、そのために誰でも白髪ができてしまいます。しかし、体内の酵素量は人により個人差が見られており、ストレスが多い人や抗酸化作用が高い食品摂取が少ない人は、必然的に過酸化酸素の量が多くなり白髪ができやすくなります。
成長ホルモンは細胞の代謝に必要となりますが、これも年齢とともに減少していきます。ピークを7とすると、40代以降は1とかなり減ることがわかっています。成長ホルモンは適度な睡眠・運動・アミノ酸の摂取が必要となり、これらが不足していれば早い段階から分泌量が減っている可能性があります。これも生活習慣や食生活の改善で変わるため、白髪になりやすい遺伝を持っていても、後天的な要因で対処できるといえるのです。
白髪と関係がある病気
遺伝や後天的な要因以外にも白髪になる原因は隠れており、病気が原因となることもあります。次のような症状がある方は病気のサインかもしれません。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌量が低下する病気です。男性より女性のほうが多くなっており、40代以降に多く発症します。甲状腺は全身の代謝とも関わっており、白髪だけでなく体全体に変化が見られます。むくみ、疲労感、寒がり、体重増加、便秘、月経異常、眠気、記憶障害などがあれば注意が必要です。甲状腺機能低下は産後になったり、海草に含まれるヨードの過剰摂取でも、一時的に起こったりします。
貧血
女性は毎月月経が見られるため、鉄欠乏性貧血になりやすくなっています。さらに貧血はビタミンB12や葉酸の不足でも起こり、栄養が不足しているために一時的な白髪が出ているだけなのかもしれません。血液が不足するとメラニン色素の材料となるチロシンが運ばれにくくなり、髪の一部で栄養不足となり白髪が見られることがあります。
自律神経失調症
自律神経はホルモン分泌などもコントロールしているため、成長ホルモンが不足すれば、髪の代謝が低下したり、血行が悪くなって必要な栄養が届けられなくなります。自律神経失調症の原因は不規則な生活、過度なストレス、女性ホルモンの変化などです。更年期に近づいた女性は女性ホルモンの分泌量が変わり、一時的に自律神経の乱れを感じることがあります。頭痛、だるさ、微熱、食欲不振、不眠などの症状がある方や、几帳面な性格の方は注意が必要です。
胃腸障害
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎などの胃腸障害をきっかけに、白髪が増えることがあります。これらの病気の一部はピロリ菌感染による影響を受けていることもありますから、病院で検査してもらい必要であれば除菌してもらうのもひとつの方法です。胃腸に問題があれば、食事から必要な栄養素が摂取できずメラニン色素をつくる栄養不足が起こることもあります。
尋常性白斑
皮膚の一部の色素が抜けたようになる病気です。肌にあるメラノサイトが何らかの原因で減少または消失してしまったもので、後天的な病気と考えられています。別名白なまずとも呼ばれており、頭皮だけでなく皮膚の一部も色が抜けたように白くなるのが特徴です。数cm~10cmくらいまでの大きさで、皮膚炎や精神的ストレスがきっかけだと考えられています。過度なストレスにより自己免疫に異常が起こり、メラニン色素をつくりだす細胞を自ら攻撃するという説もあります。
フォークト・小柳・原田病
血液中にあるリンパ球が、眼のぶどう膜や皮膚、髪の色素細胞などを破壊する病気です。最初に眼の異常から現われ、次第に皮膚の白班や白髪、脱毛などが起こる全身の病気です。眼の見え方がおかしいのに気が付き、次第に全身まで広がってしまいます。自己免疫疾患のひとつで、メラニン色素の多い箇所にて影響を受けます。眼・耳・髄膜・皮膚・毛髪などで影響が見られます。
白髪の原因は必ずしも老化による原因だけでなく、病気がもとになっていることもあります。紹介した症状がある方は病気のサインかもしれませんから、一度病院で詳しい検査をしてもらったほうが良いでしょう。体にどこも異常がなければ、遺伝や後天的な影響も考えられます。
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